[Anthy-dev 871] Re: IPAオープンソースソフトウェア活用基盤整備事業

Back to archive index

YamaKen yamak****@bp*****
2004年 6月 24日 (木) 02:47:04 JST


ヤマケンです。

At Wed, 23 Jun 2004 22:19:34 +0900,
ashie****@good-***** wrote:
> 
> 株式会社グッデイの足永です。
> 
> 既にご存知の方もおられるかとは思いますが、弊社は今年度のIPAオープンソー
> スソフトウェア開発基盤整備事業に「オープンソースデスクトップ環境における
> 日本語入力の改善」というテーマで応募し、採択して頂きました。


今回のお話を受けて、input methodの開発に仕事として多くの時間を割
ける事になりました。大きなチャンスを与えてくださった関係者の皆様
に感謝します。

今回のプロジェクトでは、uimを中心として以下の2つの開発目標を掲げ
ています。提案書に書いた文章の抜粋なので固い表現になっていますが、
要約すると「一般ユーザが求めるMS-IME的操作環境・GUIツール」と
「マニアックだが高効率な入力メソッド開発基盤」の両極を整備すると
いう事です。これらは双方とも日本語入力環境の未来にとって重要な課
題であり、特に後者は商業ベースでの進歩が期待できないので実際に必
要としている者が開発するしかありません。

----------------------------------------------------------------

(1) 平均的アプリケーションユーザにとっての利便性向上

オープンソースデスクトップ環境の日本語入力メソッドにおいて現時点
でサポートが不十分な「平均的アプリケーションユーザにとっての利便
性」を他の商用製品と同等のレベルに引き上げ、また、Gtk/Gnomeデス
クトップと勢力を二分するQt/KDEデスクトップにおける日本語入力サポー
トを改善する。これにより、現実的な選択肢としてWindowsデスクトッ
プの代替を可能にする。

既存のオープンソースソフトウェアをベースに、ユーザインタフェイス
の細部及び補助的だが重要な機能の欠落等を補完し、入力作業上のボト
ルネックになりがちな欠点をできる限り除去する。これにより平均的ア
プリケーションユーザが実際に訴えている不満を解消し、Windows環境
でMS-IME等の標準的日本語入力メソッドを使った場合と同等の利便性を
得られるようにする。


(2) 高効率な日本語入力メソッドを実験・実現するための技術基盤確立

uimの内部構造を抜本的に変更し、高効率な日本語入力メソッドの継続
的実験・改良を可能とする柔軟な基盤として再構成する。これにより、
現在のuimでは技術的制約により対応できない特殊なキー入力操作や変
換テーブルの構成を可能にする。また、これらの柔軟性は非開発者にも
変換テーブル等の設定データの編集という形で可能な限り理解・応用可
能とする。

親指シフト(NICOLA)、かな入力、漢字直接入力等の特殊な入力方式には
その優れた入力効率から熱心な支持者とコミュニティが存在するが、マ
イナーな入力方式ゆえに既存のシステムでのサポートは十分であるとは
言えない。現状では動作環境が限られており、特定のOSやアプリケーショ
ンでしか利用できない方式も多い。これらの先進的ユーザの努力は入力
方式の改良よりも動作環境を実現する事に費される事も多く、その成果
も分散しがちである。これらのユーザの要求を満たす汎用的な技術基盤
を整備する事で、高効率日本語入力メソッド改良の努力を集約し、その
進歩を後押しする。

----------------------------------------------------------------


近年は携帯電話・コンピュータゲーム文化の発展により、若年層を中心
に素早く複雑なキー操作を行うスキルを持つ人間が増えています。にも
かかわらず、デスクトップにおける親指シフトや携帯電話のポケベル入
力等、高効率と言われている入力メソッドは商業的な存続に必要な支持
を得られずどんどん市場から消えています。私はこの状況に強い危機感
を持っています。ただでさえ複雑な日本語入力において効率化の道を閉
ざしてしまっては、日本語利用者の生産性と他の言語でのそれは差が開
く一方です。たとえ今は支持者が少なくとも、いつでも利用できるよう
な環境を用意して着実に進化させておくべきだと考えています。

このような観点から、uimのコアにおいては以下のような開発を行う予
定です。今までも考えてはいたものの時間的制約から実現を諦めていた
んですが、今回のお話により開発に必要な時間を確保できるようになり
ました。GUIツール等の優先度が高いので実現はまだ先になりますが、
今から楽しみです。

- key press/releaseの正確な取り扱いの実現
- 操作コマンドのキー入力からの分離
- 物理キー、論理キー、キャラクタコードの分離
  * 変則配列キーボードのより良いサポート
  * かな入力への根本的対応
- 複数キーの同時押し(chord)の認識
  * 親指シフト入力方式への対応
- マルチストロークの認識
  * 修飾キーの1回押しによる前置修飾(sticky modifier)
  * アルファベットキーの2つ同時押しによるシフト修飾(combinational shift)


これにより可能になる機能の一例として、combinational shift(仮称) 
を紹介します(主にSKK向け)。多分前例は無いと思っていますが、同様
の機能をご存知の方はお教え頂けるとありがたいです。

例:  rを押す → uを押す → r,uを離す(順不同) → "Ru"が入力される

これは複数のアルファベットキーの同時押しと、押した順番の検出が必
要になるので現在のuimの枠組では実現不可能です。


至らない点も多々あるかと思いますが、今後ともご協力よろしくお願い
いたします。

-------------------------------
ヤマケン yamak****@bp*****



Anthy-dev メーリングリストの案内
Back to archive index