水冷スリムサーバ「Express5800/110Ge-S」レビュー
それでは、計測結果を見ていましょう。110Ge-Sのグラフを以下に示します。なお、計測時の室温は25℃でした。
110Ge-Sでは、アイドル時および高負荷時のコア温度はそれぞれ以下のようになっています。
コア | アイドル時 | 高負荷時 | 変動幅 |
Core 0 | 39℃ | 56℃ | 17℃ |
Core 1 | 40℃ | 57℃ | 17℃ |
Core 1のほうがCore 0よりも1℃ほど高くなっていますが、テストを通じたコア温度の変動幅はどちらも17℃と同じです。
次に110Geの計測結果です。
アイドル時および高負荷時のコア温度はそれぞれ以下のようになりました。
コア | アイドル時 | 高負荷時 | 変動幅 |
Core 0 | 38℃ | 52℃ | 14℃ |
Core 1 | 43℃ | 57℃ | 14℃ |
こちらではCore 1のほうがCore 0よりも5℃も高くなっています。マルチコアプロセッサでコア間に温度差が生じるのはよく見られる現象であり、複数のCPUダイを1つにパッケージングしたマルチダイのプロセッサ(Core 2 QuadやクアッドコアXeonなど)なら5℃くらいの温度差はそれほど珍しくありません。しかし、シングルダイのデュアルコアプロセッサでコア温度が5℃も異なる個体はかなり珍しいと言えるでしょう。ただし、変動幅はどちらのコアも14℃と同じになっています。
110Geに搭載されていたPentium Dual-Coreのコア間に5℃の温度差が見られたことから推測できるように、CPUの温度は同じ製品でも個体によって大きく異なることがあります。そのため、評価機と同じ構成の110Ge-Sで同じテストを行った場合でも、今回とは異なる結果が出る可能性があります。以下ではこの実験結果に考察を加えますが、この点には十分留意してください。
まず言えることは、水冷だからといって110Ge-Sのコア温度が極端に低いということはありませんでした。むしろ、温度の変動幅を見ると110Ge-Sの17℃に対し110Geは14℃ですので、110Geのほうがよい結果と言えます。しかし、110Ge-SのXeon 3065はクロック周波数2.33GHz、2次キャッシュ容量4MBですが、110GeのPentium Dual-Core E2160はクロック周波数1.80GHz、2次キャッシュ容量1MBとスペックが大きく異なりますので、このスペックの差を考慮すると変動幅に見られる3℃の違いは十分納得できる範囲です。むしろ、コンパクトな筐体に高性能なCPUを積んだ110Ge-Sが、水冷システムの採用により、ミドルタワー型サーバと同等の冷却性能を実現していると見るべきでしょう。
次に、温度の値ではなくグラフの形に注目してみます。CPUへの負荷テスト開始(テスト開始300秒後)からコア温度が平衡状態になるまでの時間を見ると、110Ge-SではCore 0が約8分間、Core 1が約6分間かけてなだらかに温度が上昇しています。一方、110Geでは平衡状態になるまでの時間がCore 0で約1分間半、Core 1で約2分間と短くなっています。たとえば、CPU使用率100%の状態が5分間継続した場合、110Ge-Sは最高温度まで上昇せずに高負荷状態を乗り切ることができますが、110Geは最高温度に達してしまいます。この110Ge-Sの温度が上昇しにくいという性質は、熱移送能力の高い水冷システムならではの特徴と言えるでしょう。一般的なオフィスサーバでCPU使用率100%の状態が長時間続くことはあまり考えられませんが、水冷の110Ge-Sならより余裕のあるCPU温度で運用することができると思われます。